コスト上昇分の約半分が自社負担?利益を守る「価格転嫁」3つの実務アクション

2026.09.10

税務トピックス

物価高や人件費、エネルギーコストの上昇が続くなか、価格転嫁ができる企業とできない企業で収益力の差が広がっています。価格転嫁は、単なる値上げではなく、事業を継続するための重要な「経営判断」です。

数字で見る「価格転嫁」の実態と危機

2025年度
全国企業倒産

1万425件

(2025年4月〜2026年3月)
※帝国データバンク調べ

物価高倒産

963件

(2025年4月〜2026年3月)
※帝国データバンク調べ

人手不足倒産

442件

(2025年4月〜2026年3月)
※東京商工リサーチ調べ

価格転嫁率

54.2%

(2026年3月調査)
※中小企業庁調べ

労務費の転嫁率

50.0%

(2026年3月調査)
※中小企業庁調べ

中小企業の価格転嫁率は54.2%にとどまっています。労務費の転嫁率は2期連続で50.0%と足踏みしており、依然としてコスト上昇分の多くを企業が自社で負担し、利益を削っているのが実態です。転嫁できない状態が続くと、利益が残りにくくなり、数年後の資金繰りや人材確保に大きな差となって表れる可能性があります。

なぜ、価格転嫁が進まないのか?

● 取引先に言い出しにくい構造
売上の大半を特定の発注元に依存している場合、「値上げを申し出たら取引を減らされるのではないか」という不安から、交渉に踏み切れないケースが多いです。

● コスト上昇を数値で説明できていない
「原材料が上がったので」という説明だけでは、交渉の根拠として不十分です。何が、どれだけ上がったのかを客観的に数字で示せないことが、交渉を難しくしています。

交渉を後押しする法改正(2026年1月に施行済み)

取適法(中小受託取引適正化法)
発注者と受注者の対等な関係に基づき、価格転嫁と取引適正化を図るための法律です。価格協議に応じない一方的な代金決定などは問題となり得るため、受注側の中小企業が価格交渉を進める際の後押しになります。
※適用対象は、企業規模や取引内容などによって異なります。

  • ■ 協議に応じない一方的な代金決定の禁止
  • ■ 手形払い等の禁止
  • ■ 取引条件の明示
  • ■ 行政による違反行為の取り締まり など

今すぐ取るべき3つの実務アクション

① コスト増加を数値で「見える化」

原材料費、電気代、燃料費、人件費などの上昇分を整理し、過去の数値と比較しましょう。「どの費用が、いつから、どれだけ上がったのか」を一覧化することで、交渉時の具体的な根拠資料になります。

②「段階的」に交渉する

一度に大幅な値上げを求めるのではなく、「今回は0%、次回更新時に再見直し」といった段階的な交渉も有効です。今後のコスト変動を見据えて、定期的に価格を見直すルールを取引先と設けておきましょう。

③「価値維持のための改定」と伝える

価格改定は、単なる値上げではありません。「品質を維持するため」「安定供給を続けるため」「必要な人材を確保するため」など、取引先にとってもメリットのある改定であることを丁寧に説明しましょう。

数字で現状を整理し、段階的な交渉と定期的な価格見直しを進めましょう。
価格転嫁ができず手遅れになる前に、ぜひご相談ください。

記事製作:経営革新等支援機関推進協議会