軽減税率の適用判断は正しく行いましょう!

2020.04.10

税務トピックス

消費税

軽減税率が導入され、あっという間に半年が経過しました。

いよいよ多くの法人が、軽減税率導入後、初めての消費税の確定申告を迎えます。

ところで、軽減税率の対象になる品目は、すでに多くの方がご存知だと思います。
飲食料品や一定の新聞は8%、それ以外は10%です。

ところが、この飲食料品の判断について、少し心配される運用があります。
今回は、初めて迎える複数税率での申告に備えて、軽減税率の適用判断のルールを、今一度、
おさらいしてみたいと思います。

 

軽減税率の「飲食料品」とは?

 

軽減税率の対象品目には、飲食料品や新聞がありますが、今回、適用判断のルールをおさらいするのは「飲食料品」です。
まず「飲食料品」とは、食品表示法でいう「食品」を指します。
「食品」とは、すべての飲食物のことで「人の飲用または食用に供される」ものをいうとされています。つまり飲食料品が軽減税率の対象かどうかは、その「用途」も判断に含めなければなりません。

「食べることもできる物」は「売り手」の判断がポイント

では、食用ではない物として販売しているけれど、食べることもできる物はどうでしょうか。

国税庁の通達では、飲食が可能な塩や植物であっても、売り手がそれを飲食用以外の用途に供するものとして取引する場合は、食品に該当しないとしています。

【食品に該当しない例】

・工業用原材料として取引される塩
・観賞用、栽培用として取引される植物及びその種子

(「軽減通達2」参照)

「食べることもできる物」は、売り手が何の用途で販売するかがポイントです。

逆のパターンも同じで、売り手が食用として8%で販売したところ、それを持ち帰った買い手が実際はそれを食べなかったとしても、その取引は8%になります。

たとえば、食用の氷を8%で販売し、買い手の事業者がそれを冷却用に使用したとしても、売り手側の課税売上・買い手側の仕入税額控除は、8%で計算します。

(参考:消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)問11)

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/24200042/noufu_kigen.htm

 

「飲食料品」の判断で心配されること

 

8%を適用するか10%を適用するかは、売り手が販売するときに判断します。

しかしこれを「売り手が自由に税率を決めてよい」という風に考えてしまうと、行き過ぎた対応が生じることが考えられます。

 

免税事業者が「飲食用以外」を悪用する

たとえば、本来は飲食用の商品を、わざと「飲食用以外」だと主張して販売し、相手に10%の消費税を請求するというような対応です。

そうすると、売り手が免税事業者の場合、増えた税金の分だけ収入が多くなり、買い手は仕入税額控除をより多く計上することができます。
しかし、自由に税率を変えられるとまで解釈を広げるのは行き過ぎです。

現実には、取引の実態から、それを何の用途で販売しているかはおのずと決まるのではないでしょうか。

もし不自然な解釈をして10%で販売し、後に税務署から「その取引は軽減税率の対象ですよ!」と指摘された場合、買い手は修正申告をしなければならない可能性があります。
その際には、加算税や延滞税の負担も生じます。

確かに、軽減税率の通達等では、売り手が何の用途で販売したかで軽減税率の適用判断を行うものとされています。
しかしこれを逆手にとって、不自然な税率操作を行うことは仕入税額控除を否認される可能性があります。
もし相手からこうした相談をもちかけられたときは、リスクを説明し、正しい税率で取引をしましょう!

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/kansetsu/160412/index.htm