「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」3.1.15発行

2021.06.25

法改正情報

 


令和3年1月15日、国税庁から

「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」(源泉所得税関係)が発行されました。

 

在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQの概要

「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」(以下、「FAQ」)は、在宅勤務に関する費用や物品を従業員に支給したとき、それが給与課税の対象になるかどうかの判断基準を示したものです。

在宅勤務をさせると、多少なりとも、オフィスで勤務するときには生じないコストを従業員に負担してもらうことになります。

これを会社が負担した場合、どこまでが給与課税の対象になるか(=源泉徴収の対象になるか)という問題を解決するのが、このFAQの役割です。

したがって、在宅勤務に対する手当をまったく支給していない会社には、関係のない内容になります。

しかし、給与課税になると知らず、ちょっとした物品や金銭の支給を行って、それを忘れてしまっている場合も考えられます。

そのため、今回のFAQは、在宅勤務を導入しているすべての企業で確認しておいたほうがよいでしょう。

また、FAQを読めば、わりとよくある企業の在宅勤務の対応を知ることができます。

「そういえば、他の会社がどんな在宅勤務の対応をしているか聞いたことがないな」という方にとっては、経営や節税のヒントになるかも知れません。

 

給与課税の基本的な考え方

業務に必要な金銭や物品を従業員に支給する場合は、給与課税の対象になりません。

逆に、従業員の私生活に充てるものと区別できないものは、給与課税の対象になります。

在宅勤務に限らない、基本的な考え方です。

 

支給方法

在宅勤務で金銭や物品の購入代金などを支給する方法には、

・最初に仮払金を支給して、使わなかった差額を返してもらう方法
・従業員がいったん立て替えたものを後から支給する方法

がありますが、どちらで支給しても、給与課税の判定に影響はありません。

 

給与課税の対象にならない支給例

それでは、FAQに記載されている具体例を見ていきましょう。

従業員宅の電話料金を支給する場合

従業員宅の電話料金は、私生活で使用した部分と業務に使用した部分を区別する必要があります。

区別するには、「基本使用料」と「通話料」を分けて考えなければなりません。

 

 

基本使用料

「基本使用料」は、業務に使用した部分を合理的に計算する必要があります。

FAQでは、「基本使用料」に対し、下記の計算式で計算した金額までなら、給与課税をしなくてよいとしています。

 

【計算式】

A×B÷C×1/2

A:従業員が負担した1か月の基本使用料

B:その従業員の1か月の在宅勤務日数

C:該当月の日数


【計算例】

・6月分の基本使用料5,000円(税込み)

・在宅勤務の日数 20日

 

上記の場合、1,667円(5,000円✕20日/30日✕1/2)であれば、
支給しても給与に含める必要はありません。

計算式の最後の「1/2」ですが、一日のうち、働いている時間を表しています。

まず統計上の睡眠時間7時間40分を切り上げて「8時間」とし、
起きている時間を16時間として、うち労働時間(法定労働時間)が占める
割合として「1/2」を乗じています。

なお、この計算式よりも精緻な方法で計算できる会社は、
その方法を使って、より多い金額を給与課税なしで支給することも可能です。

 

通話料

「通話料」は、通話明細書等がありますので、業務に使用した分だけを
実額で算定することが可能です。

よって、「通話料」は実費精算が基本となります。

ただし、顧客や取引先などと連絡を取り合う機会が多い業務に就いている従業員に限り、
前項の基本使用料と同じ方法で計算してもよいとしています。

連絡を取り合う機会が多い業務とは、たとえば、営業担当や出張サポート担当者などのうち、
会社が、連絡を取り合う機会が多いものと判断した業務をいいます。

 

従業員宅のインターネット通信料の支給

インターネット通信料には、基本使用料やデータ通信料がありますが、これらも前項の
計算式で計算したものであれば、給与課税しなくてよいとされています。

ただし、スマートフォンの場合、たとえば本体の分割払い代金、事業のために使用したと
認められないオプション料金などは給与課税の対象になりますので、
計算から除外するようにしましょう。

 

従業員宅の電気料金の支給

【計算式】

a×b÷c×d÷e×1/2

a:従業員が負担した1か月の電気料金

b:業務のために使用した部屋の床面積

c:自宅の床面積

d:その従業員の1か月の在宅勤務日数

e:該当月の日数

 

【計算例】

・6月分の電気料金12,000円(税込み)

・業務のために使用した部屋の床面積 6㎡

・自宅の床面積 60㎡

・在宅勤務の日数 20日

上記の場合、800円(12,000円✕6㎡÷60㎡✕20日/30日✕1/2)であれば、
支給しても給与に含める必要はありません。

 

その他

事務用品・物品の支給

業務に必要なパソコン等の事務用品や机等の物品については、「貸与」「支給」かで変わります。

「貸与」(物の所有権が会社のまま)であれば、現物給与として扱う必要はありません。
この場合、業務に使用しなくなれば、従業員から返却してもらいます。

「支給」(物の所有権が従業員)であれば、現物給与として課税の対象になります。

マスク、石鹸、消毒液、手袋等の購入費用や、それらの消耗品を会社から支給する場合、
それが在宅勤務のために通常必要な分であれば、給与課税の必要はありません。

ただし、家族の分などは対象外です。

 

レンタルオフィス料金の支給

在宅勤務をするスペースがない従業員にレンタルオフィス利用を認めている場合、
その代金も、給与課税の必要はありません。

国税庁のFAQでは、

・従業員が在宅勤務に通常必要な費用としてレンタルオフィス代等を立替払いすること(仮払金の精算も可)
・業務のために利用したものとして領収書等を企業に提出してその代金が精算されているもの

であれば給与課税の必要はないとしています。

 

感染予防のためのホテルの利用料

感染が疑われる従業員が、ホテルで勤務した場合、旅費規程等に基づいてホテル利用料や
ホテルまでの交通費を支給しても、給与課税をする必要はありません。

ただし、ホテルで勤務することを会社が認めている場合でなければならず、従業員の自己判断で
ホテルを利用した分は、給与課税の対象になります。

 

室内消毒の外部への委託費用やPCR検査費用等

在宅勤務の業務スペースを消毒する費用や、会社の業務命令により受けたPCR検査の費用も、
給与課税をする必要はありません。

業務のために行ったものであることが必要ですので、自己判断で行った消毒や検査の費用を
支給すると給与課税の対象になります。

 

弁当の支給

在宅勤務者への食事支給は、食事の現物支給のルールにしたがう必要があります。
以下の2つを満たす場合、会社が食券や弁当を支給しても、給与課税をしなくてよいと
されています。

・その従業員から食事の価額の 50%相当額以上を徴収していること

・会社の負担額が月額 3,500 円(税抜き)を超えないこと