2019年10月から始まる区分記載請求書等保存方式で仕入税額控除はどう変わるか

2019.07.29

税務トピックス

消費税

2019年10月から、10%と8%の複数税率が導入されることによって、仕入税額控除を受けるための請求書等や帳簿の保存要件が、現行の制度から変わります。

2023年10月から導入される「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が本格的な運用となりますが、その前段階として、2019年10月から「区分記載請求書等保存方式」がスタートします。
導入後は、ルールに合致した記載事項のある請求書等の保存を行わければ、仕入税額控除を受けることはできません。

今回は、2019年10月から導入される「区分記載請求書等保存方式」で仕入税額控除を行うための要件を解説します。

現行制度との違い

現行制度(2019年9月末まで)は、「請求書等保存方式」というルールに従い、一定の記載要件を満たした請求書等や帳簿を、定められた年数にわたって保存することを条件に、仕入税額控除を行うことが認められています。
「請求書等保存方式」と「区分記載請求書保存方式」で保存しなければならない請求書等や帳簿の記載要件は、次のように変わります。

請求書等保存方式
(2019年9月末まで)
区分記載請求書保存方式
(2019年10月から2023年9月末まで)
請求書等の記載要件 ・作成者の氏名又は名称
・取引を行った年月日
・取引の内容
・取引の対価の額(税込価格)
・書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
・作成者の氏名又は名称
・取引を行った年月日
・取引の内容
軽減税率の対象取引であれば、その内容及び軽減税率の対象である旨
税率ごとに合計した取引の対価の額(税込価格)
・書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
帳簿の記載要件 ・仕入れの相手方の氏名又は名称
・仕入れを行った年月日
・仕入れの内容
・仕入れに係る支払対価の額
・仕入れの相手方の氏名又は名称
・仕入れを行った年月日
・仕入れの内容
軽減税率の対象取引であれば、その内容及び軽減税率の対象である旨
・仕入れに係る支払対価の額


請求書等の記載要件の違い

「区分記載請求書保存方式」では、複数税率に対応するため、請求書の品目に税率8%となる軽減税率の対象資産がある場合、そのことがわかる記載が必要です。

請求書の発行側と受領側が、適用税率の認識を一致させるために行われます。

具体的な記載方法について国税庁の資料を見ると、対象品目に※印をつけ、請求書下部に、「※は軽減税率対象品目」と記載して示す方法や、品目を8%対象と10%対象で区分けして記載する方法などが例示されています。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/02-06.pdf

また、請求書の「合計額」は、「10%対象」と「8%対象」のように税率で区分して記載を行うことが必要です。価格は、税込で記載することとなります。

 

帳簿の記載要件

帳簿には、軽減税率の課税仕入れについて、その取引が軽減税率の対象である旨を記載する必要があります。


要件を満たさない請求書等を受け取った場合

仕入先から受け取った請求書に、軽減税率の対象である旨や税率ごとに合計された額の記載がないとき、「区分記載請求書等保存方式」においては、不足分を受領側で追記し、保存することによって、仕入税額控除を行うことが認められます。

ただし、追記してよいのは「区分記載請求書等保存方式」で新たに追加された記載項目のみです。

3万円未満の取引について

現行の請求書保存方式では3万円未満の取引にかかる仕入税額控除について、請求書等の保存がなくても、帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けることができます。
これは、「区分記載請求書等保存方式」にも引き継がれます。
ただし現行と同様に3万円未満の判定は1つの品ではなく、1つの取引ごとに判断される点に注意が必要です。
なお、帳簿については新要件の記載事項を満たす必要があります。

まとめ

区分記載請求書等保存方式では、請求書等の記載要件が主な変更点となります。

2023年10月のインボイス制度になると、適格請求書等を発行するための登録が必要となり、免税事業者はこの登録が受けられないなど、さらなる変更があります。

また細かい変更点として、3万円未満の取引にかかる請求書等の保存を免除するルールや、記載漏れを追記できるルールもなくなります。

区分記載請求書等保存方式やインボイス制度の導入について不明な点があれば、早めに税理士に相談しましょう。