生命保険料控除とは?控除額の計算方法や平成30年からの電子的交付も解説

2019.01.30

税務トピックス

所得税

生命保険料控除について、対象となる保険料、家族の分が控除できるかどうか、控除額の計算方法や、平成30年からの電子的交付などを解説します。

生命保険料控除とは

生命保険料控除とは所得控除の1つです。
1月1日から12月31日の間に一定の保険料の支払いがある場合、その支払額に応じた控除額を、所得から差し引くことができます。

対象となる保険料

生命保険料控除の対象となる保険は、生命保険、医療保険、個人年金保険、がん保険、所得補償保険、介護費用保険などのうち、受取人などの条件を満たすものに限られます。
ただし、この判定は控除を受ける本人が行う必要はありません。
生命保険料控除の対象となる保険については、契約先の保険会社から、毎年「控除証明書」が送られてくるからです。

生命保険料控除を受ける方法

生命保険料控除は、サラリーマンなど給与を受け取る方は職場の年末調整で受けることができ、確定申告をすれば全ての方が受けることができます。
年末調整で生命保険料控除を受けるには、会社に「給与所得者の保険料控除申告書」と、保険会社から送られてくる「控除証明書」を提出する必要があります。
確定申告では、確定申告書第一表の「生命保険料控除」に控除額を、第二表の「生命保険料控除」に支払った保険料を記載し、さらに保険会社から送られてくる「控除証明書」を税務署に提出することが必要です。

「平成30年分給与所得者の保険料控除申告書」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/h30_05.pdf

家族の保険料は誰が控除できる?

生命保険料控除では、保険金の受取人によって控除を受けられる人が決まります。
具体的には次のとおりです。

保険料の区分 保険金の受取人
生命保険料・旧生命保険料・介護医療保険料 控除を受ける本人・配偶者・親族
個人年金保険料・旧個人年金保険料 控除を受ける本人・配偶者

つまり、「契約者が誰か」ではなく「受取人が誰か」で控除できるかどうか決まるということです。
このことから、誰が控除を受けるかシミュレーションすると意外な節税に繋がることがあります。
たとえばパートタイマーの妻が自身の保険から生命保険料控除を申告すると、その控除額が所得から控除しきれないことがあります。
その時は、所得の高い夫が会社の年末調整で妻の分を申告することで、世帯でみるとより高い節税を受けることができるのです。
支払いをした人が控除を受けるという前提のもとではありますが、生計を同じにする世帯では、誰が控除を受けるかも重要になります。

控除額の計算方法

生命保険料控除額は、
・保険契約の年月日
・支払った保険料
に応じて変わります。
保険会社から送られてくる「控除証明書」に記載された保険料に基づき、控除を受ける人が計算することとなります。

平成24年1月1日以後の保険契約(新契約)

平成24年1月1日以後に締結した保険契約の場合、保険料の区分は
・一般生命保険
・介護・医療保険
・個人年金保険
の3つに区分され、それぞれに分類される保険料の支払額に応じて、控除額を計算します。
控除額の計算方法は次のとおりです。
支払った保険料
(1/1~12/31の間) 控除額
20,000円以下 支払った保険料の全額
20,000円超 40,000円以下 支払った保険料✕1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下 支払った保険料×1/4+20,000円
80,000円超 40,000円

新契約の計算例

<例>
・生命保険料の支払額 2万5,000円
・介護医療保険料の支払額 6万円
・個人年金保険料の支払い額 10万円

<生命保険料の控除額>
2万5,000円×1/2+10,000=2万2,500円
<介護医療保険料の控除額>
6万円×1/4+20,000円=3万5,000円
<個人年金保険料の控除額>
8万円超えのため、一律4万円
<生命保険料控除の額>
2万2,500円+3万5,000円+4万円=9万7,500円

新契約の最高控除額は12万円

生命保険料控除(新契約)では、3区分の保険料の支払額からそれぞれ控除額を計算し、各区分の最高控除額は一律4万円です。
したがって、生命保険料控除(新契約)の最高控除額は12万円となります。
もっともそれを受けるには、3区分の保険に加入し、さらにそれぞれの支払った保険料額8万円を超えることが条件となります。

平成23年12月31日以前の保険契約(旧契約)

平成23年12月31日以前に締結した保険契約の場合、保険料の区分は
・旧生命保険料
・旧個人年金保険料
の2区分です。
新契約での介護医療保険は、旧生命保険に区分されます。
旧契約でも、それぞれに分類される保険料の支払額に応じて、控除額を計算しますが、控除額の計算方法が次のとおり変わります。

支払った保険料
(1/1~12/31の間) 控除額
25,000円以下 支払った保険料の全額
25,000円超 50,000円以下 支払った保険料✕1/2+12,500円
50,000円超 100,000円以下 支払った保険料×1/4+25,000円
100,000円超 50,000円

旧契約の計算例

・旧生命保険料の支払額 8万5,000円
・旧個人年金保険料の支払い額 10万円

<旧生命保険料の控除額>
8万5,000円×1/4+25,000=4万6,250円
<旧個人年金保険料の控除額>
10万円×1/4+25,000=5万円

<生命保険料控除の額>
4万6,250円+5万円=9万6,250円

旧契約の最高控除額は10万円

生命保険料控除(旧契約)では、2区分しかなく、各区分の最高控除額は一律5万円です。
したがって最高控除額は10万円となり、新契約よりやや少なくなります。

前納した保険料はどうなる?

生命保険料控除の対象になるのは、基本的には1月1日から12月31日の間に支払った保険料です。
しかしこのルールで、前納した保険料が支払った年しか控除を受けられないのは不公平ですよね。
もし保険料を前納した場合は、1年分の支払いに見合う金額に保険会社が換算して控除証明書を発行されます。
したがって、支払った翌年以降も順次控除することができます。

平成30年分から控除証明書の電子的交付がスタート

生命保険料控除を受けるには、これまで保険会社が発行する「控除証明書」の原本を提出する必要があり、もし紛失した場合は、控除を受ける人から保険会社に再発行の手続きをとるしかありませんでした。
この従来の方法に加えて、平成30年分からは、保険会社より電子メールなどで交付を受けた電子データによる控除証明書を、「一定の方法」で印刷した書面を提出することで、控除証明書の原本提出に代えることができるようになりました。
ただし、この「一定の方法」が少々ややこしく、専用のソフトを国税庁HPからダウンロードし、そのソフトで作成したデータを元に、国税庁においてそのデータをQRコード付控除証明書に変換してもらうという準備が必要です。
これまでの原本に代えることができるのは、このQRコード付控除証明書を印刷したものになります。
残念ながら、控除を受ける人の手間がなくなったとは言い難い状況です。
ただしe-Taxでの電子申告であれば、専用のソフトで作成したデータであれば、QRコード付控除証明書の変換は不要で、専用ソフトで作成したデータのまま申告可能です。

参照
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/koujyo.htm

まとめ

生命保険料控除について、対象となる保険料、家族の分が控除できるかどうか、控除額の計算方法や、平成30年からの電子的交付などを解説しました。
年末調整、確定申告時の参考になれば幸いです。